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発熱

体温調節
 人体の体温は,熱産生と熱放散(輻射,伝導,対流,蒸発)により,本来35~37℃の幅で保たれ,生理的には早朝(2時~4時)に最低値を,夕方(16時~18時)に最高値となる.日内変動が0.5℃あり,1℃以上は異常と考えてよい.
 健常成人では,早朝37.2℃以上,夕方37.7℃以上を発熱とする.低体温は35℃以下をいう.女性では排卵後から月経まで0.6℃の上昇がある.小児は成人よりおおむね0.5℃高い.体温調節には日周期リズムがあり,調節部位は間脳の視索前野・前視床下部であり,体温中枢とよばれている.華氏(℉:Fahrenheit)から摂氏(℃:Celcius)への変換には℉=(9/5×℃)+32℃の式を用いる.測定部位による差では腋窩温(鼓膜温)<口腔内温<直腸温の順に高く,それぞれおおむね0.2℃,0.6℃の差がある.
定義
 急性発熱の期間は通常2週間以内で,37.1~38.0℃は微熱,38.1~38.5℃は軽度発熱,38.6~39.0℃は中等度発熱,≧39.1℃は高熱,と定義されている.特徴的な熱型を表2-1-1に示すが,最近では熱型に特別な診断的価値は少ないとされている.また熱の下り方には徐々に下がる渙散性解熱(crisis)(2~3日以上),急に下がる分利性解熱(lysis)(36時間以内)(典型例:大葉性肺炎)がある.
病態
 発熱物質の産生源はマクロファージ,単球,リンパ球である.そのメディエーターとしての内因性発熱物質には,インターロイキン(IL)-1α,β,IL-6,インターフェロン-α,腫瘍壊死因子(TNF)-α,-β,ciliary neurotropic factorがある.外因性発熱物質としてはエンドトキシンや,細菌,ウイルス,真菌由来物質がある.これらの作用により脳内グリア細胞や第3脳室前腹壁にある終板器官の血管内皮細胞は,発熱物質であるプロスタグランジンE2を産生し,EP-3受容体を介して視床下部のグリア細胞からのcAMP放出を上昇させ,体温中枢を刺激する.
 発熱は体温中枢のセットポイントが高温側にシフトしたものであるが,一方,悪性症候群,熱射病の高体温はセットポイントの上昇ではなく,体温調節機構そのものの不全である.
診断手順
1)不明熱(fever of unknown origin:FUO):
古典的なPetersdorf(1961年)の定義は,①3週間以上続く,②38.3℃以上,③1週間の検査でも原因不明,の3つを含む.検査によりおおむね70~80%は診断がつく.新しいFUOの定義は,38℃以上の発熱が数回みられ,3日間の検査でも診断がつかないものである.
 通常,考えられる疾患群は6つに絞られる.それは①感染症,②非感染性炎症性疾患,③腫瘍性疾患,④薬物熱(サルファ剤,ペニシリン,バルビツレートなど,平均6日後に発症し,中止後2~3日で下がる),⑤人工的発熱(毒物,体温計の問題),⑥その他(家族性地中海熱,Fabry病,周期性好中球減少)である.大まかな頻度を表2-1-2に示す.
2)患者へのアプローチと評価:
最も重要なのは,繰り返す病歴聴取と診察である.熱が高いわりには脈拍の亢進を伴わない場合を比較的徐脈といい,腸チフス,オウム病,レジオネラ症,ブルセラ症,マイコプラズマ肺炎でみられる.逆に,発熱のわりには頻脈である場合を比較的頻脈といい,たとえば微熱を伴う甲状腺機能亢進である.
 確定診断前の非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs),ステロイド,抗菌薬の使用は,結果的に診断を遅らせる欠点がある.
 聴取すべき病歴の具体的内容は,LQQTSFA(Location,Quality,Quantity,Timing,Setting,およびseguence,Factors,Associated manifestations:Bate’s Principle of Physical Examination and History Takingより引用)が基本で,①熱型はどのようなものか(表2-1-1)②最高体温,最低体温はおのおの何℃か③いつからか④経過とともにだんだん上昇してきたか.あるいは下がってきたか,どんなときに上がるか⑤熱の上昇とともにどんな症状が出現するか(随伴症状とシステムレビュー)⑥食事・排便・生活内容・睡眠・ペット・性的接触,海外旅行,服用した薬物は何かなどを,くまなく聴取する.
特殊な病態・現象
1)神経遮断薬悪性症候群(narcoleptic malignant syndrome):
フェノチアジン,ハロペリドールで起こる.高体温,広範囲の筋硬直,意識障害,自律神経不安定を示す.
2)Charcot熱:
胆道感染症にみられる間欠熱で,胆道感染から一過性に菌血症を起こすのが発熱の原因と考えられる.
3)悪性高体温(熱)症:
麻酔薬(サクシニルコリン)により,42℃近い高体温をきたし,ダントロレンを投与しない場合,28~70%で致死的である.
4)悪性症候群(syndrome malin):
向精神薬,抗うつ薬により高熱,意識障害,筋硬直,錐体路徴候をきたし,白血球,CKが増加し,致死的な症例もある.ハロタンその他の吸入麻酔薬で生じうる.高体温と筋拘縮が特徴で,筋小胞体のCa代謝異常がある.
5)死の交差(funeral cross):
たとえば腸チフスで腸出血が増加し,稽留熱の波形が徐々に低下し脈拍数が上昇する現象をいう.末梢循環不全により,体温・脈拍の2つの曲線が交差する.[佐地 勉]
■文献
Gelfand JA, Callahan MV: Fever of unknown origin. In: Harrison’s Principles of Internal Medicine, 18th ed (Longo DL, Fauci AS, et al) pp158-164, McGraw-Hill, New York, 2010.
Legget J: Approach to fever or suspected infection in the normal host. In: Goldman’s Cecil Medicine, 24th ed (Goldman L, Schafer AI), pp1768-1774, Saunders Elsevier, Philadelphia, 2012.
Mackowiak PA: Approach to the febrile patient. In: Kelly’s Textbook of Internal Medicine, 4th ed (Humes HD), pp1906-1911, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2000.
表2-1-1
おもな熱型と典型的疾患">

表2-1-1

表2-1-2
不明熱の原因(成人)">

表2-1-2


出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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