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スズキ - すずき(英語表記)Japanese seabass

硬骨魚綱スズキ目スズキ科Lateolabracidaeに属する海水魚。科の分類についてはハタ科(Serranidae)、パーシクティス科(旧スズキ科。Percichthyidae)、スズキ科(Lateolabracidae)およびモロネ科(Moronidae)など諸説があり、まだ定説はないが、カナダの魚類学者ネルソンJoseph S. Nelson(1937―2011)らによるもっとも新しい分類体系(2016)に従っている。日本海側では北海道から九州の北西岸や東シナ海、太平洋側では北海道から日向灘(ひゅうがなだ)、および朝鮮半島の南部と西南部などの沿岸域に分布する。体は長く側扁(そくへん)する。吻(ふん)は長くてとがり、尾柄(びへい)はむしろ細長い。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の後縁は鋸歯(きょし)状で、隅角(ぐうかく)部に1本の棘(きょく)と下縁に3本の強い前向棘がある。主鰓蓋骨に扁平(へんぺい)な2棘がある。口は大きく、下顎(かがく)は上顎より突出し、主上顎骨の後端は目の後縁下に達する。背びれは棘部と軟条部の間で深くへこむ。背びれ軟条数は少なく、12~14本(まれに15本)。尾びれの後縁は深くへこむ。体色は背側では青灰色で、腹側では銀白色である。普通は体に黒点や黒斑(こくはん)がない。若魚(全長25センチメートル以下)では背側や背びれに小黒点がある個体があるが、その直径は鱗(うろこ)と同大かそれ以下である。黒斑の数、大きさ、濃淡には個体差があるが、いずれも成魚になると消える。雌は2~3歳魚で体長30センチメートルぐらいから、雄は1~2歳魚で体長約24センチメートルから成熟する。産卵期は10月~翌年3月で、地域によって多少の差があるが、冬に盛期がある。外海に面した水深50~80メートルの、急深で凸凹のある岩礁性の湾口部や沿岸部で産卵する。卵は浮性卵。卵径は1.22~1.45ミリメートルで、1個の油球をもつ。水温14℃のとき4、5日で孵化(ふか)し、孵化仔魚(しぎょ)は全長4.5ミリメートル前後で浮遊生活をする。孵化後2か月で体長18ミリメートルほどに成長して藻場(もば)周辺にすみ、アミ類、ヨコエビ類などの小形甲殻類を食べる。20ミリメートルぐらいの稚魚になるとアマモ場、河川域や湖内に移動し、エビ、カニ、ゴカイ、ハゼ類などの小魚を貪食(どんしょく)する。若魚~未成魚は内湾や河口域にすみ、おもにイカナゴ、アユ、カタクチイワシ、マアジなどの魚類が主食となる。水温の低下につれて内湾から湾外の水深90~100メートルの深所へ移動して越冬する。地域によっては稚魚が河口域から河川や湖内へ入って生活するグループもいる。

 1年で体長20センチメートル、2年で34センチメートル、3年で45センチメートル、4年で54センチメートル、5年で63センチメートル、6年で70センチメートルほどに成長し、最大全長は1メートルほどになる。成育により呼び名が変わるので出世魚とよばれる。関東では成長順に25センチメートルぐらいの1歳魚をセイゴ、35センチメートルぐらいの2、3歳魚をフッコ、60センチメートル(4歳魚以上)のものをスズキとよぶ。同様に関西ではセイゴ、ハネ、スズキ、中部ではセイゴ、マダカ、スズキとよぶ。また、コッパ、ハクラ、セイゴ、フッコ、チュウハン、スズキとさらに細かく分けることもある。地引網、定置網、刺網(さしあみ)、底引網、延縄(はえなわ)、一本釣りで漁獲される。ルアーフィッシングの好対象魚として人気があり、夜明けと夕方によく釣れる。夏は脂肪がのり、もっとも美味で高価である。塩焼き(セイゴ)、洗い、刺身、すしなどにするとおいしい。古代人もこの魚をよく食べていたことは、貝塚からこの種の骨が発見されることからもうかがえる。また、古くからめでたい魚として祝い事に供える地方がある。

 いままで体側に鱗径(りんけい)よりも大きな黒斑があるスズキを釣り人がホシスズキとよんでいたが、それが別種にされてタイリクスズキの和名が与えられた。この種は中国大陸沿岸に生息している種と同種であることが判明したが、まだ学名が決まっていない(Lateolabrax sp.。属名+「sp.」は、種小名が未決定または不明の場合の表記方法)。他方、スズキの近縁種にヒラスズキがあるが、この種は体高がやや高く、尾柄は太短い。腹びれが黒く、下顎の腹面に1列の鱗があることなどでスズキと区別される。また、この種はスズキと異なり川に入らない。

[片山正夫・尼岡邦夫 2020年6月23日]

釣り

船釣りでは、サイマキとよばれる生きた小形のクルマエビをおもな餌(えさ)としてねらう。東京湾では先調子の2~4.5メートル竿(さお)に中オモリ仕掛けか片天ビン仕掛けで釣る。竿先にくる魚信はかなり小さい。スズキよりもやや小形のフッコ級を船からルアーで釣る所もある。ルアーはプラグやジグといったものがよい。

 防波堤では生きたモエビのフカセ釣り、ルアー釣りだが、夜は電気ウキや電子ウキをつけイソメ類の餌をつけてねらってもよい。河口付近でもフッコ、スズキが釣れる。これにはブッコミ釣りが向くが、スズキ用のルアーでのキャスティングもヒットする確率は高く、この場合は日没時から夜がよい。

 磯(いそ)釣りはウキ釣り、ルアー釣り。カラーパイプと白色系の羽を組み合わせたギジを玉子形ウキと併用したものを使うと、磯や海岸線でも投げて引いてくる釣り方で楽しめる。

[松田年雄]

調理

味は淡泊で、夏にうま味がのる。刺身、洗い、塩焼き、椀種(わんだね)などにするが、とくに酢みそで食べる洗いは夏の味覚の代表の一つである。島根県宍道湖(しんじこ)ではスズキの奉書焼きが有名である。スズキを姿のまま奉書で巻き、オーブンで蒸し焼きにして、熱いところをおろししょうが、もみじおろし、刻みねぎなどを添えたしょうゆで食べる。ほんのり焦げた奉書の香りが魚に移って風味がよい。

[河野友美・大滝 緑]

民俗

スズキは熊野の神の神魚とされる。熊野の神が川に落とした巻物を拾ったのがスズキであるといい、熊野の神職の流れである鈴木氏の者は、スズキを食べてはならないという古伝がある。『平家物語』の「鱸(すずき)」の章には、熊野信仰とスズキの関係が具体的にみえており、熊野詣(もう)でに行く平清盛(きよもり)の乗った船にスズキが飛び込んだのを、平家繁栄の前兆としている。

 スズキは、川にも上る大きな魚として神聖視されたらしい。愛知県東加茂(ひがしかも)郡の山村には、川を上ってきたスズキを簗(やな)でとって食べたところ、祟(たた)ったので、これを祀(まつ)ったという神がある。夜中に、名のある魚が通るから簗をどけろという声がしたが、そのままにしておいたら簗にスズキがかかっていたという。川に上ったスズキはとらない習慣があったのであろう。スズキは神饌(しんせん)としても特別扱いにされ、秋田県ではスズキの丸焼き2尾を婚礼のときに用いる風習があった。『古事記』の大国主命(おおくにぬしのみこと)の国譲り神話にも、神饌に大きなスズキを料理して供えたことがみえる。

 神奈川県茅ヶ崎(ちがさき)市には、河童(かっぱ)がお礼にスズキ2尾を持ってきて、かまどの上に置いていったという話があるが、これは火の神にスズキを供えた習俗の名残(なごり)であろう。

[小島瓔]

[参照項目] | 出世魚 | ヒラスズキ
スズキとヒラスズキ〔標本画〕
©大片忠明">

スズキとヒラスズキ〔標本画〕

スズキの奉書焼き
©公益社団法人島根県観光連盟">

スズキの奉書焼き


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例