ホーム > 新着記事 >

スッポン - すっぽん(英語表記)soft-shelled turtle

爬虫(はちゅう)綱カメ目スッポン科に属するカメの総称。この科Trionychidaeの仲間は軟らかい甲をもち、約6属25種がアフリカ、アジア南部および東部、北アメリカに分布し、化石種はヨーロッパ各地に産する。甲長20~40センチメートル、大形種は50~80センチメートルに達する。甲はほぼ円形で扁平(へんぺい)、表面は革質の分厚い皮膚に覆われ、甲板(こうばん)(鱗板(りんばん))を欠く。腹甲骨板は小さくて多数の窓が開いており、背甲骨板に固着せず靭帯(じんたい)組織で接合している。背甲骨板の縁には軟骨が突き出ており、広がった革質の皮膚を支えている。頭頸(とうけい)部が細長く、管状の吻部(ふんぶ)の先端に鼻孔が開口する。上下のあごには角質の鞘(さや)がなく、肉質の唇に覆われるが、あごの縁が鋭く、かむ力も強くて性質も荒い。淡水性で、流れの緩やかな河川や湖沼にすみ、一部が汽水や海水域にもみられる。四肢には水かきが発達し、ほとんど砂泥質の水底に潜って過ごし、総排出腔(こう)や口腔内での皮膚呼吸による率が高い。餌(えさ)は魚、甲殻類、水生昆虫、巻き貝などである。卵生。日本産のニホンスッポンTrionyx sinensis(俗称をマルという)をはじめ世界各地で食用に供され、人工増殖も行われている。ハコスッポン属Lissemysなど3属には、引っ込めた後肢を覆う皮膚の蓋(ふた)がある。

[松井孝爾]

養殖

スッポンは栄養価が高いので、古くから強壮剤や高級料理の材料として利用され、とくに血液は補血剤として珍重されている。

 スッポンの養殖は、1879年(明治12)に服部倉次郎(はっとりくらじろう)が東京で始めたのが最初である。その後、服部らは養殖場を静岡県舞阪(まいさか)町(現、浜松市)に移して施設をしだいに拡張し、現在の基礎をなした。浜松市のスッポンは浜中湖で天然飼育されているもので、国内有数のスッポン生産量を誇っている。

 スッポンの養成池には露地池と温室池とがある。露地池の場合、スッポンは水温が15℃以下になると砂泥中に潜って冬眠し、15℃以上になるとふたたび活動し始める。餌(えさ)は魚粉を主成分としたスッポン用配合飼料を与えることが多い。餌をよく食べて成長するのは水温が25~30℃になる時期で、日本では約4か月間と短い。そのため700~800グラムに成長させるのには4、5年を要する。一方の温室池は近年、大分県内水面漁業試験場で研究され、養殖に成功した方法である。温泉、温排水、ボイラーを利用して飼育水温を30℃以上に保つ方法で、12か月間の飼育で700~800グラムに成長させることができる。この方式のスッポン養殖は各地に普及し、長崎、佐賀、大分各県の年間水産量は一時期急激に増え、1990年代中ごろには100~140トンに達したが、2000年代に入り徐々に減少、現在は30~60トンで推移している。スッポンの全国年間総生産量は約450トン(2000)。

[川崎義一]

食品

スッポンの味がよいのは古くから知られているが、たいへん貪食(どんしょく)なところから下等なものとして卑しんだ風がある。中国では北方での食用は遅かったが、南方では古く団魚(トワンユイ)・甲魚(チヤユイ)と魚になぞらえてよび、食用にされていた。日本でスッポンの別名をマルともいうが、これは、団魚に由来するといわれる。日本では『続日本紀(しょくにほんぎ)』文武天皇(もんむてんのう)元年(697)9月条に、近江国(おうみのくに)より白鱉(はくべつ)(川亀(かわかめ)、スッポン)を献じた記録があるが、これは食用としてではなく、珍種としての献上であったといわれている。一般に食べられるようになったのは、京都では天和(てんな)・貞享(じょうきょう)年間(1681~1688)、江戸では宝暦(ほうれき)年間(1751~1764)ごろといわれている。

 スッポンの食べごろは10月から翌年4月の冬眠期である。この時期のものは産卵を控え脂が十分にのっている。スッポンは脂がかなり多いわりにはあっさりとした味である。肉だけでなく内臓も食用とされ、生き血は清酒やワインで薄めたり、あるいはそのまま飲まれる。生き肝もそのままで食べられる。いずれも補血や強精剤として珍重される。

 スッポンの料理は国によって異なり、西洋では肉は食べずにスープが好まれる。中国ではスープや煮物が、日本では吸い物、鍋物(なべもの)、雑炊などの汁物が多い。吸い物は、スッポンの肉を水と酒で煮て、塩、しょうゆなどで薄く調味したものを椀(わん)に入れ、だしですこしのばした煮汁を調味して注ぎ、さらしねぎ、ショウガの絞り汁を加える。鍋物は、スッポンの肉、内臓、皮に野菜を添え、酒をたっぷり加えた薄いしょうゆ味の汁で柔らかく煮込んで食べる。雑炊は、スッポンのスープを吸い物よりやや濃いめに調味し、吸い物や鍋物に使った残りの肉や内臓を入れ、ご飯を加え、溶き卵を回しかけたり、うずら卵を割り入れて仕上げる。刻みねぎを散らしたり、絞りしょうがを落として食べる。

[河野友美・大滝 緑]

[参照項目] | カメ
カメのおもな種類(3)〔標本画〕
©松井孝爾">

カメのおもな種類(3)〔標本画〕


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例